ソレノイドバルブの3つの作動方式と特徴

ソレノイドバルブ(電磁弁)は、電磁石の力を利用して流体の流れを制御するバルブで、産業機械、設備、配管システムなど幅広い分野で使用されています。
その作動方式には大きく分けて 直動式パイロット式パイロットキック式 の3種類があります。それぞれの構造と特徴を理解することで、用途に合った最適なバルブを選定できます。

ソレノイドバルブの作動方式比較表

作動方式作動原理特徴主な用途メリットデメリット
直動式(ちょくどうしき / Direct Acting)コイルの電磁力のみで弁を直接開閉構造がシンプル小流量、低圧用途、試験装置、分析機器– 応答速度が速い
– 流体圧に依存しない
– 流量容量が小さい
– コイル消費電力がやや高め
パイロット式(Pilot Operated)コイルで小型パイロット弁を作動 → 流体圧を利用して主弁を開閉流量容量が大きい中〜大流量用途、給水設備、空気ライン– 大口径対応可
– 消費電力が小さい
– 作動に最低圧差が必要
– 低圧では作動不可
パイロットキック式(Pilot Kick Type)起動時にパイロットを使い、途中から直動式のように作動中流量かつ低圧にも対応半導体製造、食品設備、真空装置– 低圧でも作動可
– 大流量対応可
– 構造が複雑でコスト高め

1. 直動式(Direct Acting)

構造と動作原理
電磁石(コイル)の吸引力のみで弁を直接開閉する方式です。可動鉄心が弁体と直結しており、電流が流れるとコイルが鉄心を引き上げ、弁が開きます。

特徴

  • 無差圧(低圧・ゼロ圧)でも動作可能
  • 応答が速い
  • 構造がシンプルで故障が少ない
  • 流量容量が小さい(大口径・高圧には不向き)

主な用途
分析機器、医療機器、小型設備、低圧配管など


2. パイロット式(Pilot Operated)

構造と動作原理
電磁石の力で小さなパイロット弁を開閉し、その圧力差を利用してメイン弁を動かします。電磁石自体は大きな流量や圧力を直接動かす必要がないため、省電力で大流量を制御できます。

特徴

  • 大口径・高圧流体の制御が可能
  • コイルの消費電力が少ない
  • 最低作動差圧が必要(流体圧ゼロや低圧では動作しない)

主な用途
工場配管、空気ライン、冷却水・蒸気制御など


3. パイロットキック式(Pilot Kick)

構造と動作原理
直動式とパイロット式の特徴を組み合わせた構造です。初動は直動式のように電磁石の力で弁を動かし、その後パイロット式のように流体の圧力を利用して全開にします。

特徴

  • 無差圧(低圧)でも作動可能
  • 中〜大流量に対応できる
  • 幅広い用途に対応可能
  • 構造がやや複雑でコスト高め

主な用途
水処理設備、食品機械、真空装置、半導体製造装置、幅広い産業設備

ソレノイドバルブ — 3方式の通電/非通電 比較 直動式 IN OUT 非通電時 通電時 原理:コイルの磁力で可動鉄心を直接引き上げ、弁座を開放。 低圧・無差圧でも動作。 パイロット式 IN OUT パイロット 非通電時(差圧で閉) 通電時:パイロット開 → 主弁開 原理:小さなパイロット弁を通電で開き、差圧で主弁を開閉。 要:最低作動差圧/大流量向け。 パイロットキック式 IN OUT 非通電時:ばねで閉 通電時:Kickで開→差圧で維持 原理:通電初期に直動で“Kick”。その後は差圧で全開を保持。 低圧でも起動しやすく、中〜大流量対応。

補足ポイント

  • 直動式は小流量・低圧向けで、コンパクト装置や精密機器に強い。
  • パイロット式は大口径・高流量向け。ただし流体の圧力がないと動かないため、停止状態からの起動には不向きな場合がある。
  • パイロットキック式は両者の中間で、低圧のラインでも使えるが複雑構造のため価格やメンテナンス性に影響する。

まとめ

作動方式利点注意点主な用途
直動式構造がシンプル、小流量対応、応答が速い大口径・高圧は不向き医療機器、小型装置
パイロット式大流量・高圧対応、省電力最低作動差圧が必要工場配管、冷却水制御
パイロットキック式無差圧でも作動、大流量対応構造がやや複雑水処理、食品機械

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